ゲームブックの煌めき、再び?⑦
このコラムを読み返してみて、したためる順番を間違ってしまったなぁ、と反省しきりの さくらだ です。
ここまでのカンタンな流れを書いてみると、
・Amazonでゲームブックの新作(?)をみかけた!
↓
・ゲームブックについて調べたくなった!
↓
・ゲームブックブームが起こった1984年頃を知りたくなった!
↓
・1984年前後のファンタジーやゲームの流れが面白すぎる!
ということで、気づけば「1984年頃のファンタジー、ゲームをひも解く」という話になってしまっています(笑)。
一応、毎回、申し訳程度にゲームブックの話題も触れていますが、今回は、いよいよゲームブックの話題に振れることもない回、になりそうです。
先に謝ってしまいます。すみませんっ
19. そもそも、なんで雑誌で過去を振り返るの??
さて、今回は、ここまでの話で、人によってはもやもやしている(と勝手に思っています)部分について、少し解像度があがるかもしれない話題をとりあげてみたいと思います。
ここまで読んでこられた方の中で、こんな風に感じたことはないでしょうか?
1.ここまで出てくる情報のソースがなんでやたらと雑誌なんだろう?
昔の話だから、なんとなく情報ソースが限られるのはわかるけれど、さすがに、専門雑誌からのとって出しばっかり、というのは偏りすぎ。だいたい月刊誌がメインソースだとすれば、情報のスピード感もなんかもっさりしてるし。
2.登場するゲームジャンルの繋がりや順番が、なんか考えていたものと違う
国内のゲームと言えば、ボードゲームは「人生ゲーム」、デジタルゲームは「ファミコン」から始まっていてかなり昔から存在するのは分かるけど、PCゲームやTRPGは、これらのゲームをもっと様々なかたちで楽しめるように融合的に生まれた、新しいジャンルの遊び方なのでは?
「いやいや、そんなことないでしょ?みんな分かっているから」と笑い飛ばしていただける方は、今回のコラムは読み飛ばして良いかも知れません。
「そうそう、モヤっとする!」と感じられた方は、今回のお話で、少しだけ1984年当時に関する解像度が上がるかなと、思います。そんな話題です。
まず、1本目の補助線。キーワードは「情報ツール」です。
20.あのツールはいつから使い始めた??
さて、今、なにか、気になる情報が出てきて、詳しく調べてみよう!となったら、どうやって調べるでしょう?
おそらく、皆さんほぼ共通で、スマホを開く、もしくはPCでネットにつないで、キーワードで検索を行うかと思います。もちろん、私も同じです。Googleで検索する、Wikiで確認する、あるいは、Twitterで問いかける、なんていう手段もあります。
では、これらの情報ツールは、いつぐらいに登場して、世の中に浸透したのでしょうか?
思いついた情報ツールと関連する技術を現在から遡るかたちで並べてみました。
こうして並べてみると、結構なキーワードが挙がってきます。
ちなみに、最近とかなり過去のものだけ、登場年を書いてみました。
電話は流石の近代コミュニケーションツールの中心、100年以上も前から利用開始されています。一方で、現在10代、20代での利用率が90%を優に超えるLineは、情報ツールのなかでは最近のものであることが見て取れます。
ひとまとめにしてしまったものや耳慣れない言葉もあるかと思いますので、並んでいる言葉を少し補足すると・・・
動画配信サービス:Hulu等、サブスクで動画を提供するサービスです。先に違法動画を無料で配信するサービスの方が流行ってしまいましたが、有料サービスの方をターゲットにしてみました。
インスタントメッセンジャー:同じツール内オンラインになっているユーザーを見つけて短文のメッセージを送るツールです。最近のSNSでは標準機能ですが、当時はこの機能だけでツールとして成立していました。
テレホーダイ:知る人ぞ知る、NTTの電話サービスのオプションです。当時は、インターネットへの接続は電話回線を使っていましたので、接続時間=通話料金、いわゆる従量課金(使えば使うほど請求が右肩上がりになる)でした。これに目をつけて、NTTが普通の人が利用しない23時~翌8時までの通話料金を定額、つまり使い放題で提供したサービス名です。
WEBサイト(プロバイダー):少しまどろっこしく書いてしまいましたが、インターネットに接続することです。プロバイダを通じて一般の人でも利用できるようになったタイミング、ということでこんな書き方にしてみました。
こんなかたちで伝わるでしょうか?
では、1984年当時は、これらのうち、どの程度の情報ツールまで活用できたのでしょうか?
予想してみてください。
どうでしょう、イメージできたでしょうか?
では、年数を入れてみたいと思います。
ほぼ、全滅です。
スマホはもちろん、インターネット接続もまだ存在していないどころか、携帯電話すらまだ普及していない時代になります。
ん? ギリギリ、メールが1984年に誕生している??
ただ、この時期のメールは、残念ながら大学間でのみ使われていたもので、民間にメールが広がり始めるのは、プロバイダがサービス提供をする、つまりインターネット接続と同時期まで待たないといけません。
ということで、メールも塗りつぶします。
これが1984年の情報ツール事情です。
FAXが実用化され、電話回線を通じて絵が送れるようになった、そして、公衆電話で小銭を積まずに通話ができるようにテレホンカードが登場した、こういった話題が、最先端の情報ツールとして歓迎された、そんな時期だったのです。
ちょうど、Youtubeで1980年代の秋葉原の動画がありました。当時の電化製品事情の一端を覗くことができると思います。
ちなみに、このあたりのネット環境が感じ取れる小説として、森博嗣さんが書かれたベストセラー「すべてがFになる」をはじめとしたS&Mシリーズがあります。
- すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)
- 講談社
- Digital Ebook Purchas
この作品は、国内でのメール利用開始のちょうど10年後、1994年を舞台にしていますが、この時期でもまだ一般にメールが普及されるまでには至っていません。
推理小説としても絶品ですが、いち早くメールによるコミュニケーションを小説に取り入れた作品描写にも味わい深いものがあります。
犀川は目の前のディスプレイの中で、ターミナルモードのウインドウを見つけ、全面に出した。それから、キーボードを幾つか叩いて、N大学の計算機センタのアドレスのtelnetしてみた。しばらく、時間がかかったが接続に成功する。
「助かった……」
N大の計算機センタのサブシステムのワークステーションであるUNIXに、犀川は自分の登録名でログインし、さらに、犀川の研究室のワークステーションにtelnetして入った。メールが四十通ほど届いていた。
森さんの凄いところは、この時点でネットワークでつながることの可能性をかなり正確に予見していて、「ネットワークがあれば場所は関係ない」と主人公に言わせてもいます。
その他、チャットによるオンライン会議、という発想も披露されていて、今だからこそ読み直してみたい作品かも知れません。
死者に関すること以外は質問を受け付ける、と山根がキーボードに打つと、次々に文字がディスプレイに現れた。
>警察が来るのか?
今のところ警察にも連絡がつかないが、いずれ来る
>食料とエネルギーに関しては大丈夫なのか?
しばらくは問題ない。研究所の運営と所員の生活に支障はない。
>外部からのメールは届いている。何故こちらから出せないのか?
ソフト的なトラブルと思われるが原因はわからない。現在調査中である。
(以下、略)
21.1984年の情報収集事情
ということで。
1984年になにか情報を得ようとしたとき、今と同じように動こうとすると、どんな事になるでしょうか?
例えば、「最近、人気のゲームブックはないかな?」と調べようとします。
・スマホで調べよう → スマホはありません。
・PCで調べよう → PCはあります。
・Amazonで調べよう
・Googleで検索しよう
・Wikiでチェックしよう
→ WEBサービスがありません。
終了です。
ネット接続という手段がない、という今からでは想像ができない時代、それが1984年という時代であり、ニッチな趣味を持った人が情報収集に東奔西走する時代でした。
そうなると、情報を得る手段は大きく3つぐらいにに絞られるのではないでしょうか。
1.専門店へ問い合わせる
なんといっても、餅は餅屋、ゲームブックであれば、書店に聞いてみれば情報を得られる可能性があります。あるいは、ゲームブックを取り扱っているホビーショップもあるかもしれません。
問題は、自分の周囲に、ゲームブックに詳しい書店やショップがあるのか、という点です。それすらもネットで調べることはできません。
2.詳しい人に聞いてみる
ニッチなジャンルほど、不思議なほど情報を集めている人が必ず存在します。彼ら彼女らと交友関係を結び、情報を分けてもらう、というのは非常に有効な手段です。
ですが、具体的に彼ら彼女らとはどうやって交友関係を結べばよいのでしょうか?ツイッター?ブログ?残念ながら、そういったツールはスマホごと存在しません。
3.専門雑誌を購読する
専門雑誌は、月刊が通常で、内容によっては隔月刊のものもありました。決してスピード感としては十分とは言えません。それでも、知りたい情報が手に入れられる、という他に代えがたいニーズに応えてくれます。
そして、大事なポイントは、専門雑誌は、専門店の紹介、そして同好の士をつなげる役割も果たしていた、ということです。自力で1,2を見つける事ができない人でも、専門雑誌を経由することで、雑誌意外の情報入手手段を得ることができました。
テレビでも紹介されるようなメジャーな趣味や嗜好でしたら、それに応じて様々な場所にニーズに応える場所やお店が展開されるでしょうから、さほど苦労はないでしょう。でも、そこから外れたマイナーな趣味に対しては、必死に汗をかかないと情報を手に入れることが難しかった、それに対して最初に有益な情報を提供してくれるのが専門雑誌だったのです。
だからこそ、情報が1ヶ月ないし2ヶ月単位のものでも重宝されたのです。海外の情報にしても、入ってくることが重要であって、それができる専門雑誌に読者は大きな価値を見出していました。
逆に、今のネットで国内外に限らずリアルタイムに情報がリリース、展開される時代では、1ヶ月遅れの情報を提供する雑誌への価値が落ちてしまったことは、残念ながら自然の流れなのだと思いますし、現在から振り返って、当時の専門雑誌の価値を評価するのが難しいのも無理はないと感じます。
ともあれ、これが今回のコラムで専門雑誌に大きくスポットを当てた理由になります。
一つ目の補助線、「情報ツール」の歴史、多少は補足説明になったでしょうか?
22.現在からみえる「ゲーム現代史」を考えてみよう
では、もう一つのモヤっとポイント、「ゲームの歴史がなんかヘン」について、です。
モヤっときていない方には「逆に何がおかしいの?」となりますが、モヤッとくる方にとっては、この年表あたりを見て感じてしまうのではないでしょうか?
ドラクエよりも昔に、PCで聞いたこともないタイトルのRPGがメチャクチャ出ているし、TRPGは比較的新しいゲームジャンルかと思っていたら1986年に何故か「クトゥルフの呼び声」が載ってる・・・
この世代間格差、と言っても良いかもしれない、ゲームの流れに対する認識の隔たり、ものすごく面白いです。
この隔たりが起こる理由の一端でも読み解けないか、毎度わたしの想像だけで大変恐縮ですがお話してみたいと思います。
この話にあたっては、そもそも2021年の今から振り返って見たら、ゲームの世界ってどう見えるのかな、という補助線があると良いのかなと考えました。
言うなれば、視力検査ならぬ、「ゲーム力検査」??
最近のゲームほどしっかり覚えていて、過去になればなるほど、視力検査の「C」が小さくなっていくように記憶や知識が曖昧になっていく、さて、それを各ゲームカテゴリで見ていったらどうなるだろう? という、そんなイメージです。
ということで。
この「ゲーム力検査」を、20代ぐらいをターゲットにして行った時に、過去のゲームの世界観をどうイメージできるか、というのをかなり、偏った情報と見解で作ってみました。
これが、なんちゃってゲーム現代図です
もちろん、意図して間違えて書いているところもあるのですが、わたしの勉強不足で素で間違ってしまっているかも知れないところが輪をかけてカオス。。
せっかく図を作ってみましたので、一度、こちらをもとに、「なんちゃってゲーム現代史」を見ていこうと思います。
うーん、そのお話は次回で(笑)
(つづく)