だむち~だって無知なんだもん~

底の浅い私、さくらだ が気になった主に漫画やアニメ、ゲームをぐだぐだと語っています。

『鬼滅の刃』は面白がった人の勝ち⑨

16.アニメ版製作者のこだわりに見る「分かりやすさ」


アニメ版『鬼滅の刃』の一番の名シーンは第何話か?


とアンケートを取ったら、まず間違いなく第19話「ヒノカミ」がトップに来るかと思います。


この回は、炭治郎がはじめて十二鬼月と対決することになった話であり、その対決相手
である下弦の伍・累の強力無比な血鬼術を前に苦戦する場面であり、なにより、その窮地を父の記憶、母の励まし、妹の協力、そして炭治郎自身の勇気と、本当の「家族の絆」で立ち向かう最高に燃える展開が見られる回です


純粋なアクションとしても抜群の見ごたえですので、おススメです。



最初、累の糸の結界に対して、水の呼吸 拾ノ型・生々流転で飛び込みます。
ですが、累も強力な血鬼術・刻糸牢で炭治郎を封じにかかります。

水の呼吸では突破できないと悟り、死の予感が脳裏をよぎる瞬間、これまでの記憶が走馬灯のように過ぎていき、父のヒノカミ様に捧げる舞い(神楽)に行き着きます。

父の神楽と言葉を思い出した炭治郎は覚醒し、「ヒノカミ神楽・円舞」を放ちます。
「刻糸牢」を破られ、必死に後退する累。
炭治郎は必死に累に迫ろうとしますが、糸に阻まれ、後一歩を詰めることができない。
水の呼吸から火の呼吸に変えたことで呼吸の限界が近い炭治郎。

一方、累の糸に絡め取られ失神している禰豆子を、死んだ母が涙ながらに呼びかけます。
「頑張って、お兄ちゃんまでしんでしまう」と。

その言葉に目を覚ました禰豆子は、同時に血鬼術も覚醒し、累の糸に染み込ませた自分の血を爆発させる「爆血」を発動します。

「爆血」により、鉄壁と思えた累の糸の結界を突破した炭治郎は、累に詰めより刃を首にあてると、「爆血」の力も借りて、ついに首を切り飛ばすことに成功します。

そして、刀を振りぬいて飛び散った禰豆子の血が、勝利の雄たけびをあげるように連鎖爆発して周囲を照らします。


メチャクチャ 熱い!


実は、「ヒノカミ神楽・円舞」を放って、炭治郎が逃げる累を追うシーンのアニメーションが一番度肝を抜くんですが、最後にもってきたこのビジュアル的な美しさがどうしても脳裏に焼きついてしまいますね。


いずれにしても、この一連のシーンは何度見てもゾクゾクしますので必見です。



ただ、ここで私が語りたいのは、熱い展開についてよりも、このシーンで仕掛けている「分かりやすさ」です。


最初にも書きましたが、この場面で描きたいのは、明らかに炭治郎の本物の「家族の絆」が、累の偽りの「家族の絆」に打ち勝つという描写です。


ですから、この描写をするためには、炭治郎側も家族を登場させねばならず、かなりの無理をねじ込んできています


・走馬灯から的確に父親のヒノカミ神楽の舞と父の言葉を思い出す。
・自分では練習したことのないヒノカミ神楽、しかも円舞の型を一発で発動する。
・絶妙のタイミングで、気絶している禰豆子の脳裏に母親が現れ励ます。
・禰豆子、すばやく目を覚ます。そして、突然覚醒。血鬼術「爆血」を発動。


これだけの奇跡を繰り返した末に、累の首を切り飛ばすのです。


分かりやすさのために、あえて合理性に目をつぶる。
この作品の「分かりやすさ」への覚悟を感じます。


ただ、さすがに、この連続描写はごり押し過ぎる、と思ったのでしょうか。
アニメでは、この展開に対する下手な背景説明は行わず、


このままエンディングに突入します。


これを見て「そんなご都合主義あるか!?」という考え方も当然あるかと思いますが、「家族の絆」対決を「分かりやすく」描写する、というスタンスに立てば、このくらい極端に話を見せるようにしないと伝わらないのだ、と納得できるのではないでしょうか。



ちなみに、この場面が「家族の絆」対決であって「炭治郎vs累」の対決でない、という証拠に、次の回では、実は決着はまだ着いていなかったという真実が語られ、戦いはつづいていきます。


理不尽は承知のうえでの演出ですが、その理不尽さを勝負の決着にまで負わせない、というのは上手い落としどころだと思います。



さて、ここまで第19話のクライマックスを語りましたが、実は私がアニメ版『鬼滅の刃』の「分かりやすさ」でもっと唸った点は別にあります。


次回はその点について触れてみたいと思います。


(つづく)


※本記事で掲載されている画像は「吾峠呼世晴『鬼滅の刃』/集英社・アニプレックス・ufotable」より引用しています。

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