だむち~だって無知なんだもん~

底の浅い私、さくらだ が気になった主に漫画やアニメ、ゲームをぐだぐだと語っています。

コミック『五等分の花嫁』を読んでみた⑭

【※今回もネタバレが多いのでご注意ください】



17.本当に隠したかった謎


さてさて。


前回、「本当の主役はマルオ」説を立てました。
あえて、この仮説を正しいとしてみましょう。


すると、これまで
私の考えていた作品の構図が、ぐるりと変わってしまう、
ということに気付きました。



どういうことかと言うと。


私はこれまで、この作品が「ラブコメ要素を取り込んだミステリー」と位置付けて、読み解く際に、


Level.1 ラブコメの勧め「とにかく五つ子を愛でよう!」
Level.2 ミステリーの勧め「花嫁が誰か推理しよう!」


といった感じで2段階のレベルが存在する、と解釈しました。



ところが、ここに「マルオが主役」という、もう一つの構造が入ってきます。


「なんだ、じゃあ、Level.3にそれを追加すればいいんじゃない?」
と思いますよね。


そう、私もそう思って、「さっそく書き足しちゃおー」と手を動かしたんですが。



ふと、手が止まり、変な妄想が脳内を走りました。



これこそが、このミステリーの一番のトリックじゃないのか



振り返ってみると、私は、『五等分の花嫁』を見始めたとき、


「あー、これは風太郎が主人公で、様々な困難を乗り越えつつ、五つ子と一緒に成長を重ねていき、最後に5人の誰かとくっつくラブコメか」


と思って読み進めていました。


ただ、ある時


「・・・まてよ。これはラブコメかと思っていたけれど、ミステリーの構成になっているじゃん!そうか、これはミステリーものとして5人のうち誰が花嫁になるかを推理する作品だったかのか!」


と気付きました。
しかも、割と「ドヤ顔」気味に(笑)


ところが、実はこの
「ミステリー要素」=「花嫁当て」というテーマも
          作者のしかけたミスリードだとしたら?



つまり



読者が花嫁当てで盛り上がっている中、作者が気づかれないように着々とマルオのストーリーを完成させようとしているんだとしたら?



そう思ったら、背筋がぞくっとしました。



勝手に妄想しておいて、世話ないです。




18.実は最初からまったく隠されていないマルオの本心


でも、私がそう思ってしまったぐらい、読み返してみると、マルオの描写が不自然すぎるんですよ。


ちょっと、思いついただけでも、マルオはこんな感じです。



・風太郎と五つ子の間に立ちふさがる障壁として描写


・まったく変わらない表情


・機械的に提示される五つ子の進路


・親密さを感じさせない会話


この表情、この態度。



これでは、私達読者がマルオとは距離をとってしまうのも無理ありません。



これに加えて、マルオをはじめて印象付けたのは、おそらく携帯電話でのこの会話シーンじゃないかと思います。


そう、3巻で中間試験での赤点回避のノルマ要求のシーンです。


風太郎と五月以外のメンバーが和気あいあいと放課後をエンジョイしているなか、携帯電話越しに一方的に突きつけられる厳しい条件。


これ、台詞を一回消してもらうとよく分かると思います。



殺害予告の電話シーン、と言っても通じそう(汗)



この場面の有無を言わせぬ物言いに対するインパクトが大きくて、否応なく
マルオを対立構造の存在として印象付けさせています。



でもですね。


話を読み進めて見れば、マルオは決して冷血漢でも意地悪な存在でもないことが分かります。それどころか、ひと一倍 五つ子のことを案じています。それは明白です。



それなのに、私達読者はどうしてもマルオを立ちはだかる障壁と見てしまう。



では、そう思わせるように、作者は嘘の描写をしていたのでしょうか?



まったく、そんなことしていないんです。



例えば、さきほど違和感の例としてあげた4つのシーン。


「娘に対して人一倍心配性で、でも不器用な父親」だったとして、もう一度台詞だけを見てみます。


・「君のような男に娘はやれないよ。」


・「こんな時間に外出とは感心しないね。」


・「ただし僕の知人のプロ家庭教師との二人体制、
  上杉君は彼女のサポートに回ってもらう。  」


・「すぐさま全員で帰りなさい。姉妹全員に伝えておいてください。」



ただの、良い父親じゃないですかーっ



そう、作者はマルオを無表情キャラに描く、たったそれだけのことで、


最初から良い父親キャラであることを隠すことなく、それでいて見事に読者をミスリードさせているのです。


その中でも、もっともミスリードを誘ったのはこちらではないでしょうか。


これ、五つ子が風太郎の家庭教師を受けて見事に赤点回避したものの、二乃に自宅に戻らない宣言をされ、風太郎のバイクで立ち去った後の1シーンです。


描写からすると、「鬼の形相」というのが一番あっているのですが、



でも、江端が言っているように


笑っているんですよ。ただ、娘が心配なだけで



でも、風太郎と二乃の方に目が行ってしまうと、「鬼気迫る表情」しか記憶に残らない。


しかも、作者の憎らしいところは、このページから数ページもしないうちに、


二乃の告白シーンで全部上書きしてしまうんです。


ホント、ストーリー展開が上手すぎます。



でも、こうして、ようやくこの作品にもう一層隠されたテーマが見えてきました。


ここまで分かったら、やることはただ一つです。


マルオの物語として、もう一度読み直さないと!!


(つづく)


※本記事で掲載されている画像は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しています。

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